本SFコンテンツは、東京大学大学院情報学環に開設された講談社・メディアドゥ新しい本寄付講座の一貫として実践された「SFプロトタイピングWS(Bチーム)」での議論をもとに、東京大学の院生や講座関係者メンバーが執筆した短編SF小説・SF論文をまとめたオムニバス作品です。
新しい本について考えていたら、新しい本について考えている軌跡自体を本にしたい、ということになったのですが、本というものの持つ機能について思いをめぐらせてみると、そもそも現実で起きつつあるできごとや体験について、自分以外の誰かに届けるためにその形式をとっているものを指すのだなと気づかされ、何ヶ月か(もう忘れた)にわたって、誰しもに公開されたウェブサイトと誰しもを招待可能なDiscordというテキストコミュニケーションを前提とするツールを用いて、ときにリアルタイムに、ときに過去ログを参照しながら進められてきた、このワークショップ自体がもしかしたら一つの「新しい本」の読書体験だったのかもしれないな、となんとなく座りのよろしいまとめのようにまとめることもできうるような気がいたしました。
つまり、古いものであれ新しいものであれ、本とは一つの場なのであると、これを書きながら知ったのです。この「古い本」を始まりの場として、新たな「新しい本」という場が生まれていくことを、心より願っております。 ( ーー 樋口恭介 )